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2日目には、多くの人々が街から離れ、それぞれの思惑の下、歩みを進めていった。
アイギールはそんな数多の登場人物――といってもその多くはヒトではないが――をみているうち、
この世界の感想を漏らした。
「大いに結構なことね」
アイギールがそういった理由の大部分は、観察対象であった彼らそのものにあった。
外見も、性格も、出身世界も多様性に満ちあふれていたからである。
新鮮な世界に、新鮮な知的生命体たち。
やはり、異世界はこうでなくては。
「これは……しばらくは飽きずにすみそうだわ」
満足げに微笑み、翼をひろげる。
と、翼から無数の触手が産まれでて、あちこちへと散っていった。
伝達用触手。
街にいながら、同世界の全てのモノと交流できるようにするための、非物理的なテレパス触手である。
多くの世界では、世界自身が抵抗し、ごく限られた地域にしか伸ばせないこの触手も、
この世界では、むしろそれを推奨しているかのような蔓延のさせ心地である。
これで、数多のモノと交流することができるだろう。
伝達用触手をひろげる途中、色々な集団の情報を受け取る。
何らかの意志を表明する者たち、特定のものを愛好する者たち、
喫茶店、酒場、宿屋、娯楽施設の数々……
恐らくは、それらに参加しているものは、幾分か返事が期待しやすいだろう。
特に、交流を求めるような集まりに参加している者たちは。
アイギールは、二日目の少ない情報で参加した集まりの他に、色々な集団の中に顔を出してみることにした。
どうやら集まりの中では、自身を誰かの物語に登場させたりする許可を付与するような、
そんな集まりもあるらしい。
それは、言葉のやりとりよりも、より濃密な関係性を築くことが出来るだろう。
それに、アイギールも、自身の物語になるべく他の人物を登場させたかった。
一石二鳥、願ったり叶ったりである。
「さて。後は、もう一仕事、ね」
そう呟くと、アイギールは街の空間のすみずみまで舐めるように見回す。
そして。
アイギールは、何の変哲もないように思えるところを、じっと見つめ。
口を開く。
「ここに、ひとつ」
口元をニヤリと歪め、指先からテレパス触手――ただし、先程はびこらせたものより随分細いもの――を、
なにもない空間へとおどらせる。
テレパス触手は、なにもないはずの空間から、小さな小さな穴を見つけ、どこかへと滑りこんでいく。
「ここも」
パリパリッ、にゅるん。
「見つけたわ」
ピリッ。しゅるん。
「……あった」
つぷっ。ずるん。
歪みを見つけ、そこに触手を突っ込み、穴をくぐらせる。
その作業を、ひたすらひたすら続けていく。
夢みるもう一つの世界の住民とも、交流ができるように。
少しずつ、触手を繋げていく。
「ふふふふふ……楽しみね。否定の世界、アンジニティ。
どんな異常者と話せるかしら」
触手で伝達の道を造りながら、洩れてくる断片情報を心の隅に留め、
早期に伝心できそうなモノを捜しておく。
少しでも早く話しかけられるように。
時には、おぞましい肉塊のような、心底寒気のする殺人鬼の気配を察しながら。
世界間通信ができ。
仮に、通信以外でも、セルフォリーフとアンジニティが繋がってしまったとしても、
アイギールには何の関係もないことだった。
いや、むしろ。
「躍動の世界に、負が訪れたら……この世界の住民は、
どんな情報を吐き出すのかしら?」
そうなったとしても、それもまた彼女の楽しみであった。
――世界間通信・受信可能まで、あと七日。
アイギールはそんな数多の登場人物――といってもその多くはヒトではないが――をみているうち、
この世界の感想を漏らした。
「大いに結構なことね」
アイギールがそういった理由の大部分は、観察対象であった彼らそのものにあった。
外見も、性格も、出身世界も多様性に満ちあふれていたからである。
新鮮な世界に、新鮮な知的生命体たち。
やはり、異世界はこうでなくては。
「これは……しばらくは飽きずにすみそうだわ」
満足げに微笑み、翼をひろげる。
と、翼から無数の触手が産まれでて、あちこちへと散っていった。
伝達用触手。
街にいながら、同世界の全てのモノと交流できるようにするための、非物理的なテレパス触手である。
多くの世界では、世界自身が抵抗し、ごく限られた地域にしか伸ばせないこの触手も、
この世界では、むしろそれを推奨しているかのような蔓延のさせ心地である。
これで、数多のモノと交流することができるだろう。
伝達用触手をひろげる途中、色々な集団の情報を受け取る。
何らかの意志を表明する者たち、特定のものを愛好する者たち、
喫茶店、酒場、宿屋、娯楽施設の数々……
恐らくは、それらに参加しているものは、幾分か返事が期待しやすいだろう。
特に、交流を求めるような集まりに参加している者たちは。
アイギールは、二日目の少ない情報で参加した集まりの他に、色々な集団の中に顔を出してみることにした。
どうやら集まりの中では、自身を誰かの物語に登場させたりする許可を付与するような、
そんな集まりもあるらしい。
それは、言葉のやりとりよりも、より濃密な関係性を築くことが出来るだろう。
それに、アイギールも、自身の物語になるべく他の人物を登場させたかった。
一石二鳥、願ったり叶ったりである。
「さて。後は、もう一仕事、ね」
そう呟くと、アイギールは街の空間のすみずみまで舐めるように見回す。
そして。
アイギールは、何の変哲もないように思えるところを、じっと見つめ。
口を開く。
「ここに、ひとつ」
口元をニヤリと歪め、指先からテレパス触手――ただし、先程はびこらせたものより随分細いもの――を、
なにもない空間へとおどらせる。
テレパス触手は、なにもないはずの空間から、小さな小さな穴を見つけ、どこかへと滑りこんでいく。
「ここも」
パリパリッ、にゅるん。
「見つけたわ」
ピリッ。しゅるん。
「……あった」
つぷっ。ずるん。
歪みを見つけ、そこに触手を突っ込み、穴をくぐらせる。
その作業を、ひたすらひたすら続けていく。
夢みるもう一つの世界の住民とも、交流ができるように。
少しずつ、触手を繋げていく。
「ふふふふふ……楽しみね。否定の世界、アンジニティ。
どんな異常者と話せるかしら」
触手で伝達の道を造りながら、洩れてくる断片情報を心の隅に留め、
早期に伝心できそうなモノを捜しておく。
少しでも早く話しかけられるように。
時には、おぞましい肉塊のような、心底寒気のする殺人鬼の気配を察しながら。
世界間通信ができ。
仮に、通信以外でも、セルフォリーフとアンジニティが繋がってしまったとしても、
アイギールには何の関係もないことだった。
いや、むしろ。
「躍動の世界に、負が訪れたら……この世界の住民は、
どんな情報を吐き出すのかしら?」
そうなったとしても、それもまた彼女の楽しみであった。
――世界間通信・受信可能まで、あと七日。
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――――やってきたのは、唐突な電子の津波で。
ごぼ……ごぼごぼ……
<<あ、グゥっ…… 死なない身体といっても……これだけ、情報が散っていっては……
……かはっ……喋れ、ない……話して、いたのに……届かない……
駄目……目が……覚めて、しまう……
まだ、眠っていたいのに……>>
ごぽっ
……
…………
----
「……今の夢……心残りね。
もう一度同じ夢をみたいわ。今度は、どんなモノと触れあえるかしら。
ふふ……楽しみね。
じゃあ、お休みなさい」
----
水に長いこと浸かっていた気がする。
ふと水面から顔を出してみたら、そこはまるで違う世界。
「あら、私は確か。
偽りの島にいたのではなかったかしら?」
周りの生物に焦点を合わせ、情報を収集する。
「成程。つまり、今の私とここは、まるきり新しい世界なのね」
空を見上げる。
「あれは、歪み、かしら?
どうなるかは分からないけれど。
何かが、重なって……偽島ではないわね。
もう一つの世界、のようね」
口元がわずかに歪み、微笑みをみせる。
「もう少し、静観を続けましょうか……」
ごぼ……ごぼごぼ……
<<あ、グゥっ…… 死なない身体といっても……これだけ、情報が散っていっては……
……かはっ……喋れ、ない……話して、いたのに……届かない……
駄目……目が……覚めて、しまう……
まだ、眠っていたいのに……>>
ごぽっ
……
…………
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「……今の夢……心残りね。
もう一度同じ夢をみたいわ。今度は、どんなモノと触れあえるかしら。
ふふ……楽しみね。
じゃあ、お休みなさい」
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水に長いこと浸かっていた気がする。
ふと水面から顔を出してみたら、そこはまるで違う世界。
「あら、私は確か。
偽りの島にいたのではなかったかしら?」
周りの生物に焦点を合わせ、情報を収集する。
「成程。つまり、今の私とここは、まるきり新しい世界なのね」
空を見上げる。
「あれは、歪み、かしら?
どうなるかは分からないけれど。
何かが、重なって……偽島ではないわね。
もう一つの世界、のようね」
口元がわずかに歪み、微笑みをみせる。
「もう少し、静観を続けましょうか……」
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